中国、石炭産業の第15次5カ年計画公表 転換より安定重視
中国国家発展改革委員会と国家能源局は現地時間8月10日、2026年から2030年までの石炭産業に関する第15次5カ年計画を公表した。石炭の消費量をこの5年間のどこかでピークに到達させるという目標は掲げたものの、具体的な年は示していない。専門家は、この計画が石炭からの転換を急ぐものではなく、むしろ石炭を「安価で安定した」エネルギー源として位置付け直す内容だと指摘している。
何が起きたのか
今回公表されたのは、中国政府が5年ごとに策定する経済・社会運営の指針である「5カ年計画」のうち、石炭産業に特化した文書だ。気候変動対策や再生可能エネルギー、新しい電力システムに関する分野別計画に続くもので、いずれも2026〜30年を対象とする第15次5カ年計画全体の一部という位置づけになる。
計画は冒頭で、石炭を「国民経済や国民生活、国家のエネルギー安全保障にとって不可欠」であり、エネルギー供給体系の「土台となる支えと調整機能」を担う存在だと表現している。2030年までに達成すべき目標としては、大規模で近代化された炭鉱が生産する石炭の割合を87%まで引き上げることや、石炭産業の近代的な体系を「基本的に確立」すること、需給の「動的な均衡」を保つ仕組みを整えることなどが挙げられた。
一方で、以前は政府系の機関などから2027年より前に石炭消費がピークを迎える可能性が取り沙汰されていたが、今回の計画では政府として具体的な年限を約束することを避けている。石炭産業に「安全で環境に配慮した発展」や「クリーンで効率的な利用」への転換を求める記述もあるが、全体として計画は石炭産業の縮小より生産体制の強化に重点を置いている。
計画には、石炭消費がピークを迎えた後を見据え、炭鉱企業にクリーンエネルギーや化学製品など他分野への多角化を促す内容も含まれている。この点は、2030年より前という中国の二酸化炭素(CO2)排出のピーク目標を意識したものとみられる。
背景
中国では石炭が長年、最大のエネルギー源であり、同国の温室効果ガス排出量の約8割を占めるとされる。ただしその比重は徐々に低下しており、2025年には非化石エネルギーが電源構成の半分を超え、2026年上半期には石炭による発電の割合が5割を下回った。エネルギー消費全体に占める石炭の割合も51.4%まで下がっている。
こうした中で今回の計画が石炭の役割を改めて強調した背景には、中東情勢の緊迫化があるとみられる。中国共産党系の人民日報は8月上旬の記事で、中東紛争がエネルギー市場に「深刻な変動」をもたらしたとしつつ、「中国のエネルギー体系はこうした衝撃に耐えてきた」と指摘した。国家能源局トップの発言として、石炭は中国が安定したエネルギー供給を確保するうえで「最大の自信の拠り所」だとする言葉も紹介されている。コロンビア大学グローバル・エネルギー政策センターの非常勤研究員は、今回の計画がエネルギー安全保障と低炭素化への移行を両立させるという中国のこれまでの方針の「継続」を示すものだと述べている。アジア・ソサエティー政策研究所の中国気候ハブ責任者も、中東情勢が石炭の役割を、エネルギー源としてだけでなく化学製品などの原料としても強めるとみている。
中国政府は2026年4月にも、化石燃料の「厳格な管理」を求め、地方政府ごとに石炭利用状況を評価する枠組みを設ける政策文書を出しており、今回の計画はその流れの延長線上にあるとみられる。ただし専門家は、今回の内容が石炭の「段階的廃止」や「段階的縮小」を目指す計画ではないと明確に述べており、中国政府が移行の速度について依然として大きな裁量を保持していると指摘している。
日本にとっての意味
中国は世界最大の石炭消費国とされ、その需要動向は国際的な石炭やLNG(液化天然ガス)の価格形成に大きく影響するとみられる。今回の計画が示すように、中国が当面は石炭を安定供給の要として位置付け続けるのであれば、中国国内での石炭需要が急激に縮小する展開は当面考えにくく、これは国際的な化石燃料市場の需給や価格の見通しにも関わってくる。日本は発電の多くを火力に依存しており、LNGや石炭の調達コストは電力料金を通じて家庭や企業の負担に直結する。また、中国の排出量のピークが2030年より前とされる目標を達成できるかどうかは、世界全体の温室効果ガス排出量の推移を大きく左右する。日本が掲げる自国の脱炭素目標や国際交渉での立ち位置を考えるうえでも、中国の石炭政策の細部を継続的に把握しておく価値がある。