ワシントン州で乳牛のH5N1初確認、米国19州で感染
米ワシントン州の乳牛農場で、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の感染が初めて確認された。州当局が現地時間10月8日に発表したところによると、ヤキマ郡の2農場で米農務省の検査機関がH5N1を検出した。米国では2024年3月以降、乳牛の感染が州をまたいで広がっており、感染が確認された州は19州に上る。
何が起きたのか
州当局は「これはワシントン州における牛での高病原性鳥インフルエンザの初めて知られた症例だ」と発表した。州当局は農場での調査と検査を実施し、今回の検出の把握と感染拡大の抑制に向けた疫学情報も集めたとしている。対象の2農場は検疫下に置かれ、厳格なバイオセキュリティー(病原体の持ち込み・持ち出しを防ぐ対策)が取られているという。獣医師が治療に当たっている。
米国全体では、直近30日間でカンザス州やテキサス州など計4つの群れで新たな感染が確認された。2026年に入ってからの感染確認は93の群れに上る。2024年の917群れ、2025年の171群れから大きく減ってはいるものの、ゼロにはなっていない。
背景
乳牛へのH5N1感染は、もともと野鳥が持つウイルスが種の壁を越えて哺乳類に感染した事例とみられる。ウイルスは乳の中にも排出されるため、搾乳の作業を介して牛から牛へ感染が広がるとみられている。さらに牛や人、搬送用の車両が農場間を移動することで、感染が他の農場、他の州へと伝わっていくと考えられている。
米国では感染した乳牛を殺処分する対応は取られていないとみられ、治療によって回復を図る方針が中心だとされる。これは鶏など家禽でのH5N1対応とは異なる扱いとみられる。
日本にとっての意味
米国からの生体牛の輸入は2003年以降停止しており、日本政府は2025年3月時点の評価として、感染牛を通じた国内侵入のリスクはないとしている。あわせて、日本では乳牛の移動が少なく、万が一感染が起きても拡大リスクは低いと評価している。これは、米国で拡大の原動力となった牛・人・車両の移動という増幅経路が、日本では働きにくいという見立てにあたる。
備えとしては、生乳を検体とする検査体制が農研機構に整えられている。ただし同じ時点で、都道府県に疑い事例の報告を求めているものの、報告の実績はなく、乳牛やヒトへの感染も国内では発生していない。つまり日本で問われているのは輸入牛を通じてウイルスが入るかどうかではなく、入った後に搾乳と移動が増幅経路になるかどうかである。